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5章 ベラ 1節 愛しい人

 コレンの門には、先を見越したかのようにベラが立っていた。
「こんな夜中に散歩か?フィオナ。」
黄緑色の瞳がギラギラと光っている。私は当然立ち止まり、だっこしていたムリンは、一目散に宿屋に跳ねて帰っていた。
「私は騎士団に復讐するためだけに生きていた。アリスが殺されたのよ。このまま放っておけば、アユルンに立ち入った全員が危ない!」
「それで終わると思ってんのか?」
ベラの声が一段と低くなる。
「ルダレックさえ殺してしまえば、騎士団は誤った方向に動かなくなるわ。」
「万一失敗したらどうする?」
言葉に詰まったフィオナに、ベラの平手が飛んだ。
「ことの真相を知る全員が危なくなるってわかってんのか!」
「今でも同じよ!」
フィオナの胸ぐらをつかみ、ベラが叫ぶ。
「その前にお前が殺されるだろ!私はフィオナを守るためだけに生きてきたんだ!」

5章 ベラ
1節 愛しい人

 フィオナはベラがどこかへ連れて行き、取り残された私は、おじさんがいないかコレンの中をうろうろしている。おじさんに会いたい。わからないことだらけだ。
 騎士団は何をしたのか。あのクロスボウの男は誰なのか。何故男の見せた幻覚が、私が時々思い出す小屋だったのか。イヴィって誰?カイって誰?おじさんに私のことを守れと言ったのは誰?おじさんは何者なの?
「あんまふらふらすんなよ。」
木陰から声がして、見てみるとリシタが座っていた。
「お前狙われやすいんだからな。マリーに何かあったら殺すってベラに言われてんだよ。」
ぽんぽんと地面を叩くので、横に座った。
「そういえばありがとう。アユルンで。」
「一体何したらあんな変態に狙われるんだ?お前、記憶無くなってて良かったかもな。絶対黒歴史いっぱいあるだろ。」
お礼言って損した。ひとまずムリンに蹴らせておく。
「ってぇ!ごめんって。にしても、お前ヤックに何したんだよ?」
「おじさんに?」
「違う、あのおっさんも名前ヤックだっけ?俺が言ってんのは、クロスボウの方だ。」
リシタは身震いした。
「あいつホモなんだぞ……」
「え、その話関係ある?」

 リシタは震えながら話し始めた。何でも、脳味噌筋肉のリシタは頭脳労働が苦手で、日雇いで用心棒をしていたらしい。そして、ある悪名高い商人の家にいたとき、殺し屋ヤックがやってきた。ターゲット以外は手に掛けない主義で、その他用心棒達を色仕掛けで退けつつ、彼は寝室の前、最後の砦のリシタのところに来てしまった。
「ふーん、で、負けたんだ。」
「男にファーストキス奪われてみろ!!気持ち悪くて失神したんだよ!」
まだ殺される方がマシな体験をしたらしい。その他、キスされる時に可愛いだなんだと言われたとか、ほっぺた撫でられたとか、聞いてる方はちょっと楽しい話をいろいろ聞かされた。
 そんなこんなで、ヤックには手加減無しでかかったという。
「逃がしたけどな」
「リシタの手加減無しから逃げられる相手がいるの?」
リシタが片方だけ眉を上げる。
「買い被りすぎだろ……。」
そんなことないと思う。蜘蛛に襲われたときも、ノールに追いかけられたときも、昨日クロスボウの男に追われたときも、リシタが助けてくれた。
「いつも助けてくれるし。」
「お前が期待するような理由じゃねえよ。放っとけないだけだ。……本当にマリーに生き写しで……二度とマリーを傷つけたくないから、だ。もうマリーは帰ってこないってのになあ。悪あがきだ。」
正義のヒーローって訳じゃねえんだぞ、とリシタが笑う。カラカラと笑った後に、ぐっと押し黙ってしまった。
 私のヒーローじゃ不満なのね。そりゃそうだと思う。ただお姉さんに似てるだけ、しかも私はリシタが憎む魔族で、フィオナほど美人でもない。ベラほど頼りがいもない。
「でも悪い気はしねえよ、ありがとう。」
リシタは空の方を見ながら微笑んだ。そして下ろした視線の先、ベラとフィオナを見つけて手を振る。私はそっと、音を立てずに立ち上がった。

 卑屈になってるって?私みたいに、巨乳イケメンお姉さんとかふんわり美人に囲まれてみなさいよ、わかるから!サキュバスなんて男誑かしてなんぼなのに、目当ての男がびくともしないんだから。
 しかも、その恋敵がお目当てには無関心なのよ。私のこと可愛い可愛い言ってくれてたベラも、何なのよフィオナを守るためだけに生きてきたって。
 私を育ててくれた人はどこにいるの?私を生んだ人は?私に似てる誰かだとか、その時見えた姿でなくて、サキュバス抜きにして大事にしてくれる人は誰なの?

 「マリー……」
いらいらして歩いていると、後ろから声をかけられた。振り向くと、穏やかに微笑むドウィンさんがいた。
「お前が一瞬アリスに見えたんだ……膨れっ面で歩いているから、私に怒っているアリスに見えた。」
ドウィンさんはふっと笑い、それ以上何も言わず事務所へ戻っていった。手には、ボロボロの手帳が握られていた。
 リシタは、私を助けるのは悪足掻きだと言ったけれど、そうじゃないと信じたい。私が死んだ人、会いたい人に見えてしまうのは、誑かす為じゃない。その人を慰めるためだって。

 結局誰かの代わりしかできないわけじゃない、その代わりが私にしかできないんだって思いたい。きっとそうなんだよね?
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コメント

ドウィンちゃん…;;
胸倉掴まれるフィオナちゃんを想像してテションあがって、最後のドウィンちゃんの切なさに、へのへのもへじみたいな顔になったわ…

更新楽しみにしてる!
毎日チェックしにきてる!!
早く更新してー!って思えるブログ、素敵だとおもいます!!

愛しのカイさんが出ない中、まめさんの愛しのフィオナちゃんと苺さんの愛しのベラさん章です。
というか5章ベラなのにフィオナちゃんの方が出番多い……?

楽しみといわれると嬉しいです!
3回生、去年の学校生活に比べると楽なので、これからはコンスタントに更新したいところ・w・
ながーくおつきあいください!

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