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4章 フィオナ 1節 ダンディー

 コレン女子会は、あれから何度も開かれた。これは、十月も終わりに近付いたある日のこと。
「ハロウィンの仮装どうするの?」
いつもにましてテンションの高いクローダが、どうするのと言いつつドサッと何かを置いた。嫌な予感しかしない。普段着に仮装のような服を作る奴だ、骨だけ抜いた魔族の皮が出てきても驚かない。
「マリーは魔女だよね!」
「それ本職よ。」
思った以上にまともな役割で拍子抜けする。
「えー、悪い魔女だよ?ほらみて、この大胆な衣装!」
「却下だ。」
ちらっと見えてわかったのは、ホルターネックで臍までV字に開いているという事だった。案の定、ベラの手がその衣装を没収してしまった。

4章 フィオナ
1節 ダンディー

 そんな話題に付いていけない人が一人。
「いいねえ、私も若くなりたいよ。」
優しい声で言ったのはフェネラおばさんだ。私がコレンに来る一月ほど前、村を焼き払われて逃げてきたらしい。
「フェネラおばさんもやろうよ!」
「私はこの体型じゃあ、南瓜くらいしかできないよ。」
思わず吹き出してしまった。おばさんはただにこにこしている。
「南瓜といえば……今年はどうやって調達しようかね……アユルンはもう危険で入れないし。」
「ハルクに頼めばいいんだよ!」
アユルンに何があったか知らないが、ドウィンさんがクローダの頭を叩いて黙らせたことからして、相当危険なんだろう。
「奴が立ち入り禁止の場所に入るのはこれ以上容認されないぞ。傭兵団ごと罪に問われてもいいのか?」
「そうだよ、まだ魔族がいるかもしれないからね……焼けてしまって、南瓜も残ってないよ。」
フェネラおばさんは悲しそうに笑った。その顔を見てわかった。きっと嘘だ。それに、村が焼き討ちされたって、畑の真ん中までは火が回らないはずだ。ただ、魔族がいて危険だから、遠慮しているだけ。
「でも、南瓜の飾りがないと寂しいねえ。」
ドウィンさんが俯いた。
「申し訳ない、騎士団で立ち入りが禁止されているから……。」
「いいんだよ。」
どうにも後味が悪い。みんな忘れてない?ハルクは傭兵団員でいけない、リシタ達もそう。ドウィンさんもだめ。でも私は?戦えるし、カロック曰わく不死身だし、取りに行ってもいいんじゃない?

 とはいえ、私だってわざわざ魔族うじゃうじゃの村に行きたくはない。
「子猫ちゃん、一緒にお昼でも……」
「こんな可愛い子が一人で歩いちゃ危ないよ」
「お嬢さん」
「お嬢ちゃん」
まだ、まだ、クズだらけの街の方がマシだ。道を聞くために声をかけようと思うまでもなく、身の程知らずがナンパしてくる。ロチェストの酒場に着くまでに軽く20人くらいの男を沈め、酒場のドアを開けると、女主人がニヤニヤしながら待っていた。
「お嬢ちゃん、モテモテだね?」
「見てたんですか。」
「客が、別嬪さんがいるって騒ぐからさ。それは置いといて、見慣れない顔だね。どうしたの?」
そう彼女が言う間にも、酔っ払いが私に文字通り絡まってきた。それを軽くおたまで殴って追い払い、店の奥の席に案内してくれた。「お姉さん、南瓜はありますか?」
「南瓜を買いに来たの?残念だけど、産地のアユルンが襲われてから手に入らなくてね。うちも困ってるのさ。」
「アユルンかぁ?ヒック……それならぁ、俺がぁ!」
どこからか酔っぱらいの声が聞こえる。と、向こうが一瞬騒がしくなり、次の瞬間店内がしんと静まった。
「お嬢ちゃん、南瓜は諦めな。」
静まった向こうから、落ち着いた足音ともに男がやってくる。またかと身構えると、その男がふっと笑った。
 ハルク程じゃないけれどリシタより遙かに背が高く、年はカロックくらいだ。確かにこの人なら、ナンパなんてせずとも美人の奥さんと可愛い子供に恵まれていそうだった。
「お嬢ちゃん、このおっさんは大丈夫だよ。いつもああやって酔っ払いを始末してくれる人さ。」
主人がその客の肩を叩く。
「まあ、君みたいな可愛い子は警戒するに越したことはない。」
彼は私の横の椅子を引いて座った。顔がよく見えるようになって、私は驚いた。この人、ボサボサの髭で損している。眉毛までボサボサだけれど、綺麗に整えたら絶世の美男だ。
「何口説こうとしてんのさヤックさん。ただでさえロチェスト一の男前だってのに。」
「こんな髭の男やもめのどこがだ。若い子が相手にするはず無いだろう?」
なあ?と見てきたけれど、髭がなかったらどうかわからない。
「ほらもう、お嬢ちゃんぽーっとしちゃってるだろ!用がないならあんたも追い出すよ!」
「ひどいなあ……じゃなくてだ、お嬢ちゃん、アユルンには首を突っ込まない方がいい。ハロウィン用の南瓜が欲しいんだろうが、もうあそこは二度と入れない村だ。」
ヤックさんは、いい子だから今年は我慢するんだぞ、と頭をなでてきた。この人もたいがい軟派な人だ。ヤックさんを見上げると、お父さんが子供を諭すような笑顔だった。ヤックさん子供いるのかな?ん?ヤックさん?ヤック!?
 がたっと立ち上がると、ヤックは心底驚いたように仰け反った。その隙に、フルパワーで冷気を集める。
「お嬢ちゃん!?」
「何のつもりよ!貴方、ヤックって、指名手配犯の!」
危ないところだった。紳士だと思って油断したけれど、私は殺し屋にも狙われかねないんだった。
「ちょっと待て、違う、私は違うから!」
「うっさいだまれ!アイスブラスト!」
男に氷の霧を吹き付けると、あっけなく凍りついた。お手柄だ!
 お手柄、なのか?ヤックといえば、騎士団が束になってかかっても捕まらない男だ。いくら最大出力でアイスブラストをぶつけたからといって、こうも簡単に捕まるものなのか?
「お嬢ちゃん、ちがうよ!この人指名手配犯じゃないよ!」
女主人がわたわたとお湯を持ってくる。
「でもヤックって。」
「確かに顔も似てるし名前一緒だけど、どう考えてもこのおっさんじゃ年取り過ぎだろう?」
どうやらまずいことをしたらしい。

 数分後、解凍されたヤックさんに土下座した私は、何故かケーキを奢ってもらっていた。主人もジュースをサービスしてくれた。どさくさに紛れて、解凍するのと一緒に店にも再生魔法をかけたからかもしれない。
「いやあ、君みたいな元気のいい子がいると心強いよ。」
ヤックさんは私の魔法の容赦無さが気に入ったらしい。ドMかとおもったけれど、なんでも昔使えた魔法が年とともに使えなくなったんだとか。久々に魔法を目にして懐かしかったらしい。
「亡くなった妻も、魔法使いだった。息子も、妻程じゃないが使えたんだ。息子には時々間違って氷漬けにされたよ。」
ヤックさんは寂しそうに眉を寄せた。
「妻はサキュバスだった。君もだろう?同じ感じがするよ。」
「おじさん、わかるの?」
「ああ。サキュバスには独特のオーラがある。だから尚更、アユルンには手を出してはいけない。君は魔族からも人間からも狙われる。」
おじさんは、女主人カリスが酔っぱらいの相手をしているのを確かめてから声を低くした。
「私の妻を殺したのは、過激派の人間だった。お嬢ちゃん、アユルンは立ち入り禁止になっていると知っているだろう?魔族がいるだけなら、騎士団が立ち入れないわけがない。ただ魔族に襲われただけの村ではない。」
おじさんが私の両肩に手を置いて、真正面から見つめてくる。
「私はこれ以上、サキュバスを殺されたくないんだ。絶対に行くんじゃない。」
「は、はい」
「いい子だ。」
くしゃっと頭をなで、おじさんは何事もなかったかのようにまた普通の声で話し始めた。
「南瓜の産地というほどでもないが、オルテル領に行ってみてはどうだ?あそこは農村が多いから、南瓜を育てている農家もあるだろう。」
あそこの領主とは知り合いでな、とおじさんが取り出したのは、コウモリのエンブレムだった。
「これを持っていれば、領主の奥さんがよくしてくれるだろう。」
「……すごくパンクな人なのね。」
普通の領主様の奥方は、コウモリなんて身につけないと思う。おじさんは笑った。
「ああ。びっくりするだろう。」
その奥方は想像を遙かに超える存在らしい。会ってのお楽しみだと教えてくれないおじさんに連れられ、私は酒場を後にした。

 ロチェストは危ない街だから、ひとりで出歩くんじゃないぞ……そう言って、おじさんは私をコレンまで送ってくれた。
「オルテル領は?」
「あそこは自治領だ。王国騎士団が立ち入ることも滅多にない。」
何より、例の奥様がいるから安心だと言って、おじさんはコレンの門で背を向けた。
「おじさん、コレンに泊まらないの?」
「ははっ、一応妻帯者なもんでな。いくらこの世にいないとは言え、無断外泊は気が引けるよ。」
「そう……。」
おじさんの笑顔はどこか妖艶だった。まったく、私はサキュバスだというのに、報われない恋しかしない。リシタはフィオナばっかり、おじさんは未亡人。おじさんには恋してないけど……あんなに思われるお嫁さんが羨ましくないわけじゃないんだ。



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ようやくおじさん登場。
結構前に奥さんを亡くした独り身です。髭ぼさっとしてどことなくやつれてるけど、滲み出る色気と元の造形の良さで無自覚ナンパしてしまう罪な男。
でも奥さん以外愛せません。

このあともちょくちょく出てくる重要人物です。
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