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3章 カロック 1節 大人気の秘密

 ハルクはチーフテンを討伐し、コレンは元の平和な村に戻った。リシタもちょっと吹っ切れたみたいで、もう私に敵意を向けてきたりしない。
「マリー、時間はあるか。」
私もカロックの巨体に慣れた。そんなある日のこと。
「釣りへ行こう。リシタとハルクがな、この間の戦いの疲れが取れないようだ。育ち盛りだから食う量が足りないのだろう。」
「それで魚を?肉の方が喜ぶんじゃない?」
「今は下手に出歩けば魔族に当たる。川なら大群では来ないしな。」
釣り、話には聞いたことがあるけれどやったことはない。面白そうだ。
「釣りする!でも、ハルクはあれ以上大きくなったら邪魔だし、リシタはもう伸びないんじゃないの?」
「二人ともコンプレックスみたいだから言ってやるなよ。」
カロックは低い声で笑うと、手招きして船着き場へ歩き出した。

3章 カロック
1節 大人気の秘密

 平和な状態に戻ると、些細なことに腹が立つようになる。
「もう、男ってあり得ない!」
「そう怒るなマリー。息をするようにナンパする奴らだ。適当にあしらっておけ。」
話したこともない不細工なくせにチャラい傭兵にナンパされること五回。宿から船着き場まで、200メートルもない距離でだ。
「不誠実よ!」
「思っていたより初なんだな。」
「どういう意味よ。娼館にいたからって阿婆擦れじゃないのよ!」
「そういう意味じゃないとも。それだけ可愛い顔なら、男に言い寄られるのにくらい慣れているかと思っていたんだがな。」
可愛いと言われて悪い気はしない。おまけに勝手に海中から船に飛び上がってくる妙な魚がいるおかげで、私は早速焼き魚にありつけていた。我ながらチョロすぎる早さで機嫌がよくなった私から、カロックが釣り竿を取り上げた。
「なに?」
「あまり時間を置くと、話しづらくなりそうな気がしてな。それに、これだけ飛び込んできてくれれば十分だろう。」
カロックが困ったように、生け簀にビチビチしている魚を放り込んだ。
「釣りに誘ったのは、まああの二人の腹を満たしてやる為でもあるが……お前に言っておかなければならないことがあったからだ。今からする話は、絶対に他言無用だ。」
「だから人のいない川にしたのね。」
うなずいたカロックは、私に隣に座るよう船の縁を叩いた。

 お願いだから私を川に落とすなよ、と言ってから、カロックが私の目をじっと見てきた。話しづらいって、何だろう。
「もう気づいているだろうマリー。自分があらゆる生き物を引きつけてしまう事に。」
「お魚以外来てほしくない奴ばっかね。」
「ああ……。」
カロックが大きく深呼吸して、目を閉じる。
「お前が本当に魔族だからだ。リシタの言いがかりではない。……薄々気付いていたんじゃないか?」
その声は優しかった。
「マリー……一つわかってくれ。私達は、リシタも含め、最初からお前が魔族だと知っていた。だから、今更態度を変えるつもりはない。」
でも何を言っているの?
「ただ、お前自身が何も知らないままなのは危険すぎると思ったのだ。お前はサキュバスがどういう存在かわかっていない。お前が誰に狙われているのか知らない。」
「ちょっと待ってよ。」
カロックが眉根を寄せて黙った。
「カロックまでそんな事言うの?やっとリシタが優しくしてくれるようになったのに!私は魔族なんかじゃない!」
「少しは人の話を聞け!」
大声を出されて、心臓が跳ねた。カロックは私を見て少し悲しそうな表情をしてから、また穏やかに話し始めた。
「マリー……確かに、些か無礼な物言いだった。すまない。」
「嫌だ、魔族なんて嫌」
彼の手がぽんと頭に乗る。
「先に私の話をしよう……。本当に魔族が悪なのか考えてほしい。……私はな、オーガと人間の混血種だ。魔族でも人でもないというのはそういうことだ。」
「混血……?」
「驚いただろう。交配ができるとは知らなかったか?確かに、ノールやらグレムリンやら、人型でないのとは無理なようだが……オーガ、ゴブリン、サキュバス、そういう人型の魔族とは人間は子供が作れるようだ。」
いろいろ新しい情報が多すぎて理解できない。まず、魔族と人間がどうして子供を作るの?ずっと戦争しているのに。
「まあ、聞け。私達ジャイアントは遙か昔、人間とオーガの間に生まれた。本当に昔だ。まだ戦争していなかった頃だ。何世代も前。知っての通り、私達は見た目が悪いし、オーガに比べると小さい。だからずっと、オーガと人間のハーフの間でしか子供を作らなかった。それがジャイアントだ。」
その前に、どうして魔族と夫婦になるの?
「納得できんか。」
「出来ない。魔族を愛したりするわけがない。」
カロックがふっと笑った。
「強情だな……マリー、それはお前を浚ったのが人間だと知ってもか?お前は何故魔族を憎む?」
記憶がなくなってしまったなら、最後にお前に危害を加えた人間を憎むべきだ……彼はそう言った。もし特別な理由がないまま魔族だけを憎んでいるなら、それは危険だと。
 確かに、魔族だけを恨む理由なんてなかった。でも、魔族は人に害をなす。
「魔族は人間を殺すじゃないの。カロックの村も、リシタの村も、魔族に襲われたんでしょう?」
「……アイダン隊長が、魔族の村を一つ、一人で壊滅させたことを知っているか。妻子を殺された恨みからだったが……何の関係もない種族の村だったそうだ。」
「……」
「魔族を愛せとは言わない。それは私も無理だ。だが、マリー……。自分がサキュバスである事は受け入れるんだ。」
「……嫌よ」
カロックが深いため息をつく。
「手遅れになる前に、気付くことだ。何が正しくて何が間違いなのか。自分のすべき事は何かにな。」
 
 もう無理なのかもしれない。見て見ぬ振りをしたことはいっぱいある。毎日毎日シャワーの度に見るお尻の妙な文字。教わった記憶さえないのに、騎士団のヒーラーを上回った魔力。あらゆる生き物を引き寄せる力。人間ならあり得ないことだった。でも、体に染み着いた魔族への憎しみは、どうやって消せばいいかわからない。
 川から戻った私とカロックが口を利かないのを見て、ベラは困ったように笑った。
「まあ、あのリシタの育ての親じゃ、女の子を傷つけないように話すのは無理だってわかってたさ。」
カロックが一言、すまないと言って宿に入った。
「マリー、びっくりしただろ?」
ベラは少しかがんで、私をのぞき込んできた。ベラも知ってたんだ。思わず目をそらしてしまう。
「悪いな、私もフィオナも言いづらかったんだよ。マリーが魔族を心底嫌っているから……あれでもカロックなりの優しさだ、わかってやってくれよ?」
ベラがぐしゃぐしゃと私の頭をなでる。
「ベラは魔族が嫌いじゃないの?」
ベラが一瞬目を丸くした後、何かに頷いて微笑んだ。
「あー、別に?記憶喪失になったら、魔族のことも人間のことも何も覚えてなくってさ。逆にマリーは、何で魔族が嫌いなんだ?」
「それカロックにも言われたの」
目を上げると、ベラはにこっと笑った。
「で、答えは?」
「知らない」
「私にはわかるけどなあ、マリー?」
そんなわけない。私にもわからないのに。どうせ先入観だ何だと言うに決まってる。
「マリー、よーく思い出してみろ……」
嫌だという意味を込めて首を傾げると、ベラがいつものように笑う。
「反抗期かなーマリーちゃん?」
「違う」
「じゃあ思い出せ。今持ってる一番最初の記憶だ……マリー、魔族を悪いものだと『思い出した』のは、リシタに魔族だって罵られたからじゃねえか?お前は化け物に襲われたとは思っていたんだ。でも、それが魔族に結びついたのは……自分と似た形の生き物に、魔族だから敵だと言われたからだろう?でなければ、お前を監禁していた人間の方を憎むのが当然なんだ。どうだ?」
 言われてみれば、そうかもしれない。何となく、小さい頃の近所のおばさんの話を覚えている気がしなくもないけれど……その前に、私は二足歩行の犬がノールだということも知らなかったんだ。
「どうだ、なんとなく気持ちがほぐれたか?そしてお前が頑なに魔族を嫌うことになったのは……自分が魔族なのが嫌なのは、魔族だと人間に嫌われるからじゃないのか?」
さっき、私に魔族が嫌いじゃないのか聞いただろう?と言って、ベラは宿屋を指した。
「答えはもちろん、嫌いじゃない、だ。嫌いだったらリシタと同じように、見た瞬間斬り殺そうとしてるさ。さ、帰るぞ。」
ついて行こうとしたけれど、足が動かない。
「リシタは!他の人は!」
そんな言葉が口から出た。私が魔族だったら、きっともう、この村にはいられない。娼館に閉じこめられたのだって説明が付く。魔族だったからなんだ。
「魔族が憎いって、みんな口だけだ。そもそも奴らは、まだ魔族との戦争で死ぬのを怖がってる位なんだからな……。そんな奴らがお前に何かするようなら、私とフィオナが許さねえよ。リシタなら、もう完全にマリーに絆されてるぜ、安全だ。」
ベラは腕を広げた。
「一番問題なのはお前だ、マリー。結構魔族もいいもんだって教えてやるよ。おいで。」
そろそろと近付く。宿に入った途端、殺されたりしないだろうか。
「何ビビってんだ。」
ベラはつかつかと歩いてきて、私を抱き上げた。前々から思ってはいたけど……この人そこらの男よりかっこいい。私がちょっとときめいている間に、ベラは宿に入ってしまった。


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