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2章 リシタ 1節 男はクズばかり

  ドアを蹴破る音で目が覚めると、昨日やたらと私を魔族呼ばわりした男が剣を持って立っていた。その首には、フィオナの剣が付きつけられている。
「寝ぼけているの?リシタ。昨日反省してたわよね?」
「ああ、調べに行った。でも何一つそいつが無実だって証拠は出てこなかった!」
そういえば、私、昨日男を何十人も焼き殺したんだった。

 2章 リシタ
 1節 男はクズばかり

 あの男はリシタというらしい。超無礼な方法で部屋に入ってきて私を殺そうとしていたリシタは、30秒後にはフィオナに半殺しにされて部屋を追い出された。フィオナは私とリシタに、昨日のことを口止めした。私が爆発を起こしたことは誰にも言ってはいけない、私は爆発の時に怪我をして記憶を失ったことにしろって。
「本当に私、悪いことしてないの?」
「正当防衛よ。」
「でも、爆発でこの村も壊れたって……。」
「いいの、言わなきゃばれないわ。」
「どうしてフィオナはそんなに私を守ってくれるの?」
「私もろくでもない男にひどい目に遭わされたから。さ、細かいことは気にしないで、朝ご飯よ。」
フィオナについて入った食堂は、汗臭い男で溢れていた。気持ち悪い。
 一番近いテーブルに、綺麗で格好いい女の人と、リシタが座っている。
「そりゃフィオナに殺されかけたって仕方ねえな。そんなだからお前の片思いは成就しねえんだよ。」
「それとこれとは関係ねえだろ!フィオナは間違ってる。誰があんな爆発起こしたと……。」
「話すな、って言ったわよね?」
早速私の事を喋っていたリシタの首にフィオナの剣が……私の目がおかしくなければ刺さっている。リシタも飛び上がった。
「了承はしてねえよ、この暴力女!」
「舌を切った方がいいかしら。」
思わず後ずさりすると、格好いい女の人と目が合う。その途端その人は大声で笑い始めた。
「うっわ、リシタお前可哀想!こんな可愛い子敵に回したら、フィオナが敵になるに決まってんだろ!」
「悪かったな俺が可愛くなくて!」
私でさえ、いざリシタと目が合うまでは可哀想だなと思ういじめられっぷりだった。ちらっとこちらを見た目は敵意に満ちていて、そんな同情はすぐに消えてしまったけれど。
「あんたの人間嫌いは、俺を止める理由にはならない。俺はこれからも魔族が憎い。……ましてこんな、男に取り入るような能力持った奴はな。」
「男は魔族でも人間でもクズしかいないのね。」
笑い転げる女の人と、豆鉄砲食らった鳩のような顔のリシタを見て、私は思っていることをそのまま口に出してしまったことに気付いた。
 鷹のような黄色い目と睨みあう。
「別にあんたに取り入る気なんてない。取り入られてるように思うなんて可哀想な奴ね、余程もてないんでしょうね。」
こうなればヤケだった。自分の名前も、どこから来たかもわからない状態で、私は今本当にイライラしている。イケメンに言われるならまだしも、こんな背の低い、微妙な顔の奴に私が取り入る?侮辱もいいところだ。
「この身の程知らずが。」
リシタは口をぱくぱくさせている。ついにフィオナまで笑い出すと、リシタは私を睨みつけ、荒々しく食堂を出て行った。
 ドアがばたんと閉まり、食堂中の人がこちらを見た。こちらというより、机をバシバシ叩きながら笑っている女性を。
「お嬢ちゃんいいねえ!ははははっ、一生語り草にしてやろっと、リシタのやつ!」
自意識過剰だって可愛い女の子に言われて言い返せなかったとか傑作!と咽ながら叫んでいる。
「ベラとお嬢ちゃんにいじられて、可哀想と言えば可哀想だけど面白いわ。」
フィオナが席につくと、食堂の扉がゆっくり開いた。ドアをくぐって現れた大きな体に、思わずフィオナの陰に隠れてしまった。入ってきた大男は私がびくついているのに気付いたのか、膝を曲げて背を低くした。申し訳ないけれど、背が低ければいいという問題ではない。ムキムキのおじさんが膝立ちでごそごそ寄ってくる方が余程怖い。
「お嬢さん、具合は悪くないみたいで何よりだ。私は君の敵ではないから、そう怖がらないでほしい。そして、リシタの無礼も許してやってくれ。あの子は魔族の事となると周りが見えなくなる。」
とりあえず遠ざかって欲しくて、私は頷いた。あのチビを許してやる気は毛頭ないけれど。
「そして姉妹たちよ……あまりリシタを苛めないでやってくれ。ベラ、お前はお姉さんだろう?」
「いじめてないぜカロック。可愛がってるだけだからな、なあフィオナ、お嬢ちゃん?」
「そうよ、可愛いと苛めたくなるじゃない?」
カロックという大男は溜息をついた。
「フィオナ、ベラ、君たちは本当に初対面なのか?えらく気が合っているようだが……。リシタが苦労しそうだな。」
「私を魔族呼ばわりするからよ。」
私も加勢してみると、カロックは微笑んだ。私の向かいに座ってきたけれど、やはり大きすぎる体に思わずのけぞる。カロックの眉が垂れ下がった。
「じきに慣れるだろう……。お嬢さん、リシタは、育ての親の私が言うとどうしようもないが、馬鹿だ。悪い子ではないがな。一度思い込めば、それを貫き通してしまう。あの子には、人間を襲うのは魔族だという関係がしっかりできてしまっていてな。」
「じゃあどうして私が魔族になるの?あそこにいたのは魔族だった。人の家を襲って娘を攫ってはあそこに閉じ込めた。」
「御嬢さんも、人を襲うのは魔族だと信じ込んでいるようだな。人間も人間を襲う。君を閉じ込めていたのは人間だった。焼け跡から出てきた骨も人間の物だったよ。」
信じられない。人間は……人間と話した記憶があるかと言えばないけれど、もっと優しいはずだ。野蛮じゃない。そんな気が……そんな記憶がどこかに残っている。
「リシタは幼いころ、村を魔族に焼き払われた。その時の記憶と、火事になった娼館が重なったんだろうな。生き残っていた君に怒りをぶつけなければ、正気を保てなかったんだろう。後できつく言っておくから、もう忘れてやってくれ。」
「でも、私を魔族だって言うのは許さない。」
顔も思い出せない近所のおばさんが言っていた。住んでいた街を魔族に焼き払われた。家族も殺されたと。そんな人が何人もいた。百歩譲って人間が人間を襲うことがあったとしても、魔族が人を殺すことに変わりはない。私は無意味な人殺しなんてしない。魔族じゃない。
「ああ、言っておこう。」
カロックはゆっくり頷くと、運ばれてきたスープに目を細めた。
 
 朝ご飯の間、私はいろいろ聞いた。ここがコレンという傭兵だらけの村だということ。フィオナはしきりに男なんて信用するなと言っていた。特に、事務所のゲレンという男は第一印象から最悪だったらしい。
「ああ、傭兵団で思い出したよ。アイダン隊長が君の名前を知りたがっていた。」
「どうして?」
たぶん久々に食べるご飯はおいしくて、私のパンはもう5個目だ。
「そりゃ、働かざる者食うべからず、ってやつだろ。傭兵団に登録するには名前がいるからな。でも、忘れたんだっけ?自分の名前。」
ベラは自分の分のパンも分けてくれた。よく食べるな、と言いながら頭を撫でてくれる。
「うん……。」
「あれだ、マリーでいいんじゃね?リシタがそうやって呼んだんだろ?」
そう言って、ベラはフィオナを見た。
「そうよ。だから知り合いかとも思ったんだけど……見間違いだったみたいね。」
「私等もマリーが誰かは知らねえけど、リシタが会いたい人だったんだろ、たぶん。それで、余計にお嬢ちゃんに辛く当たるんだろうさ。そろそろ……あいつは自分の頭でしっかり考えられるようにならねえとな。昔のことは昔のこと、19になって感情で突っ走るのは……。」
リシタは4歳の時に魔族に家族を殺され、村を壊され、さまよっていたところをカロックに拾われた。ベラは12歳ぐらいの時記憶を失ってさまよっていたのを拾われた。3人は家族のようなものらしい。ベラはリシタを苛めるけれど、それも愛情表現の一つだろうとカロックは言っていた。
「いい機会だろ、我が弟を鍛える。他にパッといい名前も思いつかねえしなあ。」
ベラは私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「でも、それじゃお嬢ちゃんがリシタにもっと辛く当たられない?」
私は首を振った。
「え、大丈夫なの?」
「なんか……」
カロックやベラになんだかんだ大切にされているリシタを見ると、思う。この人たちの輪に入りたい。
「嫌なこと言われても、さっきみたいに言い返してやればいいから。」
何か別の名前を付けてもらって、当たらず障らずで過ごすのも有りだろう。でも、それではきっと、誰とも仲良くなれない気がした。自分のことが何もわからなくて、話し相手もいないなんて、そんなのは寂しくて嫌だ。
「マリー、お前漢前だな。気に入ったよ。」
「リシタがさらに可哀想な状態にならないといいが……。」
こうして、私の名前はマリー、家はコレンの宿屋になったのだった。


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