スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1章 マリー 2節 問題児達

 割れたガラスが散乱し、傷ついた村人で溢れかえる店の前。無傷なのは結界の張られた魔法商店だけだった。
「ネベレス、貴方どこに行くつもりですか!あんなに大勢の前に姿を現したら……」
扉を押さえている青年に、フードの男は薄く笑った。
「あの爆発、魔法によるものだと知っていてもまだそんなことを言うのか。」
「だからです!騎士団が駆けつけるでしょう。あなたこそ、自分の首にいくら掛けられてるか知っているんですか!」
「駄目じゃないブリン!ヒヒッ!」
聞きたくもない声がしたかと思えば、扉がブリンごと吹き飛んだ。
「怪我した人、見てあげなくちゃ!」
「師匠っ!ああもう……とにかくあなたは引っ込んでてください!」
ブリンの細腕がフードを引っ掴むと、奥への扉に向けて男を放り投げた。

1章 マリー
2節 問題児たち

 気が付けば育ての親の腕の中、最近可愛くなくなってきた義弟と共に床に押し付けられていた。ランプは消え、窓ガラスが飛び散っている。ベラの鋭敏な鼻は、血の臭いも嗅ぎ取った。
「カロック、怪我したんじゃ……!」
「少しだ。気にするほどじゃない。ベラ、リシタ、怪我はないか?」
「俺は大丈夫だけど、カロック……」
「大丈夫だ。」
体を起こすと、月明りでお互いの顔が見える。眉の垂れ下がった二人に、カロックは体同様大きな声で笑う。
「二人とも心配性だな。」
「だって俺たち、カロックがいないと生きてけねえもん。」
リシタが情けない声を出した。いつもならいびりにいびるベラも、泣きそうな顔になっている。尋常でない様子に、カロックは自分の体を見てみた。確かに流血しているが、そんなに深い傷ではなさそうだ。
「お前たち、傭兵団に入るというのに、そんな怖がりでどうする。みんなを守るんだろう?ほら立て。」
優しい表情で……しかしカロックは二人の頭を片手ずつで鷲掴みして引っ張った。二人は痛がる様子もなく操り人形のように立たされている。これがジャイアント流なのだろうか。
 割れた窓から見下ろした広場は、地獄絵図と化していた。殆どの建物が壊れ、怪我をした傭兵で溢れている。皆、ロチェスト側にある魔法商店に押し寄せている。そこしか壊れていない建物がないようだ。頑丈な傭兵団事務所でさえ窓が割れている。
「傭兵団事務所のドアが飛んでいるな。中に誰もいないといいが。」
「カロック、村が……どうしよう、俺はまた何も……」
「……っ」
ふと二人に目を戻せば、ひどく震えていた。
「本当にどうしたんだ、」
屈んで視線を合わせれば二人の目に窓の外が映った。パニックに陥る人々、どちらへ逃げていいかわからずに広場で押し合っている。まだ幼い少年兵、少女兵が泣き叫ぶ姿……
 それはまるで、魔族に襲われた村だった。

 探している部屋は、上の階。我先にと降りてくる宿泊客を押しのけて上へと上がれば、すっかり空になった廊下へ出た。息を整える間もなく走って、目当てのドアへ。
「もうお前たちは大きくて強い。私より素早く動けるし、力も申し分ないだろう。」
聞こえてきた声はカロックのものだ。どことなく不穏な言葉にドアを開けようとしたが開かず、思いきりドアをノックする。
「ベラ!大丈夫なの!?」
「フィオナ……?」
「カロックが今にも死にそうな時の台詞みたいなこと言ってるけど!誰か呼んでこようか!?」
「え、カロック死にそうなのか……?何で早く言わないんだ!」
「リシタ、どうしようドアが開かねえ!」
話は読めないが、とりあえず中の3人が危ないことはわかる。
「ベラ、下がってて!」
「おいフィオナ待て私は死にかけてなんか」
フィオナは一歩下がり、助走を付けて扉を思いきり蹴った。轟音を立ててドアが倒れる。
「カロック待ってて、すぐに人を……あれ?」
中では座り込んだリシタの背をゆっくり撫でるカロックが、心底呆れた目でベラとフィオナを見ていた。
 死にかけていたはずのカロックは、腕を切ってこそいたが、震え続ける二人に比べればどうということは無かった。
「だから待てと言ったんだ。」
「だって、あとはお前たちに託すみたいなこと言ってたから。」
フィオナが来た今では、リシタよりは平静を保っていたベラでさえも座り込んで膝を抱えてしまっている。
「リシタとベラがあんまり怯えるからな。お前たちはもう昔とは違うと言い聞かせていただけだ。」
昔とは違う、という言葉を考えるフィオナに、カロックは鋭い視線を送った。フィオナが黙って頷く。大きく息を吸い、明るい声を出した。
「リシタ。何この程度で震えてるのよ。貴方背と一緒で肝も小さいの?」
リシタがぐっと顔を上げた。吊り上った目でフィオナを睨むが、その顔に浮かんだ穏やかな微笑みに、開きかけた口を閉じた。一度ゆっくり目を閉じ、ゆっくり目を開く。
「平気だよ。俺はカロックが心配だっただけだ。」
「そう、ならいいんだけど。」
フィオナの手が、乱れてしまったベラの髪を梳くように撫でる。ベラも大きく深呼吸し、自分を撫でるフィオナの手を掴んだ。強い目がフィオナを見る。
「悪いな、もう大丈夫だ。可愛い子に弱み見せてるようじゃ駄目だな。」
「あら、口説く余裕があるの?」
フィオナがにっこり笑うとベラがにやりと口角を上げた。
「当たり前だ。私はそこのヘタレ男とは違うぜ?」
「ベラはリシタより可愛い子に目が無いもんでな。その上押しが強い。気をつけろよ。」
カロックが声をあげて笑い、立ち上がる。ベラ、リシタ、フィオナも続いた。
「とりあえず、傭兵団が復旧しないことには村の修復も進まない。行こう、兄弟。」

 魔法商店へ人が流れるせいで、傭兵団前は人がおらず、ひっそりとしている。
「これは、片付けに時間がかかりそうね。」
中に入れば、椅子がカウンターに当たって砕け、飛ばされたドアがキャビネットを割っていた。
「とりあえず、ドア直そうぜ。あれがいちばんでかくて邪魔だ。」
硝子を踏まないように気を付けながらキャビネットに近付くリシタ。割れかけた木の板を持ち上げるのと、ベラが叫ぶのは同時だった。
「アイダン隊長!」
「え?」
戸口へ向き直ったリシタも、キャビネットを振り返って凍りつく。
「しっかりしろ兄弟!」
カロックがガラスの山の中から掬い上げた人物は、低く呻くと目を開けた。
「大丈夫か、おじさん!」
「リシタ……?」
「どっか切れたりしてないか?この村、医者ってどこにいるんだ?」
「ありがとう、少し気を失っていただけで怪我は……さっきのは何だ?」
アイダンは自分が抱えられていることに気付くと、カロックに下すよう促した。が、左足を痛めたようで顔をしかめている。
「急にドアが飛んできて、キャビネットに叩きつけられたところまでは覚えているんだがな……。」
「「「隊長!!」」」
「お前達、無事だったか。よかった。」
「私達もついさっき、フィオナが掘り出してくれたんです……。」
震えた声のケアラは木屑まみれで、フィオナは何食わぬ顔でそれを払ってやっていた。その落着きっぷりに驚きつつ、リシタはアイダンに向き直った。
「事務所の人は怪我がないみたいだけどさ、村の人が怪我してんだ。隊長、この村の医者ってどこにいるんだ?」
「医者はいない、が、魔術師のブリンとリエル様なら治癒魔法が使えるはずだ。マレック、二人が無事か見てきてもらえるか。ケアラ、外が騒がしいようだからお前は誘導に当たれ。ゲレン、お前は私とここを片付けて、村人の休める場所を作る。いいな。」
「「「はい!」」」
ケアラとマレックが飛び出していく。
 フィオナは呆然としているベラの背をトントンと叩いた。
「大丈夫、村のど真ん中で爆発が起きたわけじゃない。死人は出ないわ。」
「わ、悪い……大丈夫だ。」
訝しげにベラを見るアイダンに、フィオナは有無を言わさぬ視線で返す。
「アイダン隊長、爆発の原因は調べなくても構わないのですか?」
「調べなければならないが……」
アイダンは声を低くした。
「魔法の使えない私にでも、魔力の流れがわかった。これほどの力を出せるとなれば、只者ではないだろう。力も、地位もだ。不用意には動けない。」
「それは、傭兵団としてですか?」
フィオナの問いに、アイダンは目を丸くする。只者でないことは薄々気づいていたが、この死んだはずの女が生きていたのは、偶然ではないような気さえした。
「えらく察しがいいな。」
「大きな組織がまとまっているために影が必要なのはわかります。でも、私はそれは許さない。アイダン隊長、おそらく今身元不明の私達を、傭兵団に入れられず苦労してらっしゃるのでしょう。使わない手はないと思いますが。」
ギラリと光ったように見えた青い目に、思わず頷く。
「では、頼もうか……。」
「隊長、なら俺も行きます。もう二度と、魔族の好きにはさせない。」
ぐいと出てきた青年の目も光っていたが、こちらは純粋な光だった。
「助かる、リシタ。だがお前は今冷静さを欠いているようだ。フィオナの指示には従うように。……他の2人にも……」
「ベラは調子が悪いようです。カロックは村で瓦礫の処理に当たった方が、救助にはいいのでは。」
今度はカロックが驚いたようにフィオナを見る。ベラはふわりと微笑んだ。
「ありがとうフィオナ。」
「了解だ。頼んだぞ、兄弟。リシタ、くれぐれも無茶はするな。」
「おう!」
がしゃんとドアを嵌め直し、リシタは元気よく拳を出した。それを見て優しく目を細め、カロックも拳を合わせる。加減し損なったかリシタは少々痛そうな顔をしたが、剣を抜いてアイダンに敬礼すると、生き生きとして事務所を飛び出していった。


クリックお願いします><

マビノギ英雄伝 ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

スマホ版変わってるw

カイさん出番まだー?w
カロックがイイキャラしてる⊂((・x・))⊃

カイさんは私がいらいらするくらい出てきません(笑)
ゆっくり待っててくださいな。

かろっくさんは無自覚デストロイヤーです(`・ω・´)

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。