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2章 リシタ 2節 集中砲火

 結論から言うと、私は傭兵団には入れなかった。アイダン隊長は昨日の事件の真相を知っているらしい。というか、フィオナがアイダン隊長に報告したせいで傭兵団幹部には広まっていて、今朝のリシタとの喧嘩のせいで傭兵全員に知れ渡っていた。
「正当防衛とはいえ、コレンも少なからず被害を受けた。」
やっぱり、そううまくいくとは思っていなかった。男達を、人間を殺したのは理由があっても、コレンまで巻き添えにしたのは許されないってわかってた。
「ああ、そんな顔をするな。君が解放した女の子のご家族が、今朝お礼を言いに来てくれた。命の重さに優劣はないが……何かを救うために、然るべき犠牲を払っただけのことだ。」
要するに私は悪くないということだ。でも、犠牲じゃなくて報いじゃないのかとも思う。不服そうなのが顔に出たのか、隊長はふっと笑った。そして声を低くする。
「建前はそうとして、私は君がやったことが間違えているとは思っていない。傭兵団に登録することはできない……だから、魔族との表だった戦闘に君を連れて行くことはできないが、君のその魔法と気の強さ、置いておくのは勿体ないと思う。報酬は払うから、力を貸してくれないか。」
 私の最初の任務は、コレンの神殿の片づけを手伝うことだった。

2章 リシタ
2節 集中砲火

 コレンの宿屋は、エルンワスさんというおじいさんと、ティイというフィオナくらいの年のお姉さんが切り盛りしている。二人とも温和で、ティイなんて皆にもてはやされてアイドル状態だ。料理はうまいし、間違いなくおいしいし、優しいし、可愛い。ごはんの美味しさだけは本当に認めざるを得ないんだけれど、私はティイが苦手だと思った。
 白い巫女服なんて似合いすぎてて女神そのものに見えるけれど……ひがみだとわかっているけれど……。何十人も殺した私にはその姿が眩しすぎた。エルンワスさんに大事に育てられたお嬢さんと、牢の中に閉じ込められていた私と。ティイの見る世界は、きっと私は見られない。ティイが言うほど、世界は美しくも儚くもない。私の世界は、もっとどろどろに汚くて、でももっと重くて痛くて楽しいものだ。
「ごめんなさい、神殿の管理は私の仕事なのに。」
私の心が腐っていると言いたいなら言えばいい。でも、壊したのが私と知っていて謝る必要がどこにある。むしろ嫌味にしか聞こえない。
「いや、私のせいだし。」
「そんな、女の子たちを助けるためだったんでしょう?」
「私が出たかったの。自分の牢屋を吹っ飛ばして、そしたら閉じ込められてる子がいたから出しただけ。なんか美談みたいになってるけど、村を壊したのもあの娼館にいた男を殺したのも私なんだよ?」
ついつい語気が荒くなる。ティイが黙ってしまったが、私にどうしろというの。正当防衛だった、でも、人を殺して心が荒れない人間なんている?
 神殿は燦々たる状態だった。コレンよりも娼館に近いから、影響が大きかったらしい。
「女神様のご加護は……」
ティイは美味しそうな匂いのするバスケットを持ってきていた。この口ぶりからして、女神の加護で神殿は壊れていないから、私を村から連れ出して、お弁当を食べてリラックスさせて……と考えていたんだろう。つくづく優しい人だ。でも、優しすぎる。
「女神なんて、いるわけない。」
「マリーちゃん?」
「女神がいたら、魔族が人を襲うわけがない。私があんなふうに閉じ込められたはずがない。そこで羽がもげている像は、ただの白い石だ。誰も守ってくれない。ただ人が不安だから、勝手に作った美人の像だよ。」
神殿の柱はすべて倒れて、粉々になっていた。真ん中に、羽が砕けた像がある。
「マリーちゃん、女神様には、私達を守る力はないんですよ。」
ティイはこの状態を見ても、まだ信じているらしい。女神とやらを。
「昔、世界を壊そうとしたドラゴンがいたんです。女神様はそのドラゴンを封印するために、全ての力を使ってしまいました。ただ、眠りに落ちる前に人間に約束をしたそうです。魔族を全滅させれば、再び目覚め、人間のための楽園を作ると。それが、魔族との戦争の理由でもあるんです。」
理由は分かったけれど、腑に落ちなかった。
「それに、守ってくれなかったわけではありません。神殿の高い柱が爆風を止めたおかげで、コレンの被害はあの程度で済んだんです。」
確かにコレンは助かった。でもその前に、私に爆発を起こさせなければ、私をあんなところに閉じ込めなければよかったはずだ。
「理解はできたけど、私は信じないよ。」
ティイを見上げてみれば、寂しそうに笑っていた。その優等生さ、気に入らないのよ。
「人を殺した後、生き物を殺した後、人が幸せになれると思う?」
今の私が、私がやったことは絶対間違ってないと正当化して、人を殺したのを忘れて生きていけると、そう思うの?
 少し開けた場所に、拾った粘度の塊で円を描く。唐草模様も正確に、そして古代文字。
「マリーちゃん?」
「離れてて。女神なんて信じない。でも、だからって自分が壊したもの直さないほど子供じゃないし。」
誰に教わったのかわからない言葉が、自然と出てきた。
「リバースグラビティ!」
岩が浮き上がっていく。神殿は元の形へと戻っていった。
『……、もう俺よりうまくできるようになったんだな。』
~その瞬間、目の前に森が広がる。懐かしい家、嵐で飛んでしまった屋根板を担いで梯子を登る青年の顔は見えないが、彼は横を漂う板を見て優しく言った。~
「一瞬で……すごいですね……ふふっ、お昼もってきててよかったです。」
「魔法は、全て、あの人を助けるためだけに覚えたのに……」
「……マリーちゃん?」
そう、人を殺すために覚えたわけじゃなかった。あの人が、幸せに暮らすためにと教えてくれた。なのに私は、それを復讐のために。人を殺すために使ったんだ。
「マリーちゃん、貴方が起こした爆発は、人の命を奪ったかもしれません。でも、それは貴女を守るためだった。あなたに魔法を教えてくれたその人は、貴女が辛い思いをするのは望まないと思います。」
ティイはお弁当を開けて私に見せた。
「神殿も直りました。コレンの窓も同じように直せば、それで女神様は許してくださいます。あの男の人たちに非がなかったわけではないのですから。お昼食べて、元気出しましょう?」
でも私はティイの胸に顔をうずめる方を選んだ。情けない。優しすぎるとか嫌っておいて、こうやって甘えているんだから。頬に何かふわふわした物が当たる。
「ほら、ベンシャルトも心配してます。」
涙が流れてきた瞬間、ティイの体がこわばる。慌てて離れると、私の後ろを見て凍りつくティイ。
「食べたい……?ベンシャルト何を言っているの?逃げろ?どうしたの?」
振り返ると、そこには口が。
「どうしたの、ベンシャルト、この女の子は食べ物じゃ……」
大蜘蛛の口があった。

 咄嗟に作り出した氷の壁が、一瞬で砕け散る。
「やめなさいベンシャルト!」
腰を抜かしたまま叫ぶティイを浮かせて、とにかく神殿を出た。神殿の門を崩しながら、大蜘蛛が追ってくる。蜘蛛に火の玉をぶつけると、蜘蛛が怯んだ。
「マリーちゃん、やめて!私が落ち着かせますから!」
「何言ってるの、こんな大きい相手なんだよ!」
無理矢理魔法から抜け出し、蜘蛛に這いよるティイを、爪が襲う。慌てて壁を作ったが、制御しきれずティイまで氷の中に入れてしまった。が、おかげで氷はティイごと遠くに弾き飛ばされた。蜘蛛が私に向き直る。狙いは私だけらしい。
 ならば、始末するまで。またコレンには迷惑をかけることになるが、あそこには傭兵がいっぱいいる。とてもこの蜘蛛を一人では倒せないから、できるだけ被害のないところに誘い込んで、皆で叩けば……
「こっちおいで、私が食べたいんでしょ?」
ふと目に入った鐘塔。あの中に逃げて、ちらちら姿を見せていれば、塔を上ってくるだろう。下から槍かなんかを投げたら討伐できるはずだ。私は一目散に塔へ走った。
 しかしこの蜘蛛、どうにもおかしい。先ほどから何度も火の玉をぶつけている。ここまで痛い目に遭えば、普通の生き物は食欲なんて忘れるだろう。なのに鐘塔に飛び込んだ私を追いかけ、壁に体当たりを繰り返している。早く上に登って姿を見せなければ、塔が崩されてしまう。遠くで、傭兵の叫び声がする。蜘蛛がより多くの食料に気を取られる前に、降りられない高さまで登らせなければ。
 と、私の頬を矢がかすめた。
「アイスブラスト!」
とんできた方向を睨んで叫べば、二足歩行の犬の氷像が数体転がり出てきた。どういうこと?まさか、魔族が村を攻めている真っ最中だったってこと?でも今はそんなこと気にしていられない。妙な犬の一匹や二匹なら放っておいても問題ないが……今塔を揺らしている大蜘蛛は、地上にいさせてはならない。
「おいで!私はここよ。」
また飛び出してきた二足歩行犬を階段から突き落とし、私は2階の窓から顔を出した。案の定、蜘蛛が体を盾にして登ってくる。
「マリー!」
声がして下を見ると、炭のような顔のチビが立っていた。今はあんたの説教聞いてる場合じゃない。無視して、蜘蛛の爪が窓に刺さる直前で避け、三階へ駆け上がった。
 窓の外では、傭兵団が隊列を組んでいる。屋上へ出てみれば、バリスタ隊の前でティイが何か言っていた。蜘蛛は順調に上ってきている。見ていると、アイダン隊長達はバリスタを置いて歩いてやってきた。何をしているんだ。あの蜘蛛に、肉弾戦を挑むつもりなのか。
「あんたに剣と盾で挑んで勝てるわけないじゃないの……ねえ?」
蜘蛛を上からのぞきながら言う。と、下からすさまじい怒鳴り声がした。何を言っているのかよく聞こえないが、チビだ。後列の兵士に追い返されている。騒ぎを聞きつけたフィオナが、ああ……いつものように剣を突き刺している。リシタではなく、その兵士の方に。そうこうしている間に、隊長たちは鐘塔に入ってきたようだ。
「もう少し上に行こうよ、ここからあんたを突き落したって死なないから。あのおじさん達、あんたに勝てると思って来たのかなあ。」
ほぼ同時にのそのそと上がってきた蜘蛛の攻撃を後ろに飛んで避け、私は階段に足をかけた。上を見上げれば、大きな鐘が見える。そうだ、あれを蜘蛛に落として潰してしまえばいい。

 けれどこれが難しい。蜘蛛が歩くたび塔が揺れ、階段もあちこち腐って抜ける。蜘蛛はといえばその場でじたばたと暴れ続けている。その足元で巨大な剣を振り回す男がいた。蜘蛛の方が押されている。だがあの剣、そう長くは体の方が持たないはずだ。急がないと。
 と、追い打ちをかけるようにバリスタ攻撃が始まった。巨大な鉄の矢が降り注ぐ。揺れはさらに大きくなり、私が立っている所から下が崩れた。間一髪で上の段にしがみつき、蜘蛛もろともぺしゃんこになるのは回避する。が、揺れがひどくて動けない。そうこうしているうちに、バリスタから逃げようとした蜘蛛が登ってきた。いや、違う。私を狙ってきている。まずい。逃げられない。
「っ、ファイヤーアロー!」
気休め程度の火の玉が飛んでいく。この状況じゃ集中できない。
「ファイ……!」
私のすぐ横に、バリスタの矢が突き刺さる。振り返ってみれば、バリスタが数十本、こちらへ飛んでいた。うち一本は、あのまま飛べば私に刺さる。そうでなくても、全ての足場が崩れてしまう。
「ぼけっとしてんじゃねえ!」
声が聞こえた瞬間、私がしがみついている段に2本、剣が突き刺さった。両サイドを切られ、板が重力に逆らえず外れた。私と一緒に。蜘蛛は目標を見失い、階段の上でただバリスタに貫かれていく。蜘蛛の姿がどんどん離れて行った。目を閉じる。せめて、せめて落ちた時痛くありませんように。

 肋骨が折れたかと思うほどの衝撃と、男の呻き声。今まではさして気にしていなかった蜘蛛の鳴き声がいやにうるさい。
「こんの……バカ女が……」
顔を横に向けると、真っ黒な肌。睨みつけてくる猛禽類のような黄色の目。その向こうに、バリスタに崩された足場が轟音を立てて落ちてくる。
「空中で体勢立て直せ!何諦めて頭から落ちてんだ!」
「え?」
「とりあえず引っ込んでろ!てめえは上から落ちてきたものに当たって死にそうだ……。」
やや投げ飛ばすように私を安全なところに入れた男は、リシタだった。



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爆発しろって?

あゆさん主催イベントで、あゆの特別賞をいただきました!
やったー><

その発表動画でゆっくりあゆむんが言った一言。
「ベッドで爆(ry」
えらい人気なんですけど。皆さん食いつきすぎなんですが。
すぐにでもログインして、爆発してほしいカップルであゆさんにお礼言いに行こうと思ったのですが、いけなかったのには理由がありました。

KEIKAの中身にあげるマフラー、編めてなかったんだ!
で、今日デート行ってきました!デート中に編んでたよ!
そしてできました。
彼氏にマフラー巻かせたまま残り編んでて、まるで犬の首輪状態だったのでまあ目立つ、見られる、でも気にしない。
2m40cmとか一人じゃ持てないんだ!私の身長1m55cmなんだ!
そして私はドSなので結構楽しかったわけです。

それはさておき、完成品

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龍獄「おい……。俺の顔を勝手に使うな。」
だって顔出しはだめじゃん。似てるし。
彼氏は年取ったら龍獄さんになりそうな顔してます。色黒いけどね!

彼はマフラー自分でうまく巻けないそうなので(ネクタイより簡単だと思うんだけど。)はじっこにボタンつけてわっかにできるようにしました。これならほどけることもないね!自転車に巻き込んで事故る心配もない安全設計。

さあ、来年は何を編もうかな


あなたのクリックでさらなる大作を目指します。


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かっこいい人特集

私が英雄伝をやる理由……
そんなのイケメンやら可愛い子やらにハアハアするために決まってるじゃないですか!
というわけで、撮りためてきたかっこいいESを紹介します

まず、誰かわからないけどかっこよかった編


誰かかっこいい人

どっかの誰か4

どっかの誰か2

ものの見事にカイしかないです。
皆さんお名前全く分かりません。
ただ、リザルトで写真撮られてるってことは、超強いです。
二枚目と下の人同一人物な気がしなくもないですが、もし見てらっしゃったらゲームで声かけてください、写真撮らせて!
龍獄「俺は……?」
あなた弱いから写らないんです。
さっさと14k超えろよ。

そして次、いつも遊んでるくせに登場回数少ない彼氏のイヴィ


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龍獄「くっそかわっ」

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KEIKA「龍、どこ見てるの?」
龍獄「断じて俺じゃない。SS撮ったのはあの変態だ。」


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写り良いんですよね。龍獄さんより!
龍獄「俺もそれなりに頑張らされているだろうが。フィニッシュ間際になったらやたらスマッシュさせられるだろ。」
いやだってないのに。
かっこよく決めようとしたら、自分のPCが重くなって、その前にあんたがキックの脚下すのに。


というわけで、悲しいかな龍獄さんかっこいいSSないです。
時々苺さんがからてばさん日記でうちの子のかっこいいのあげてくれるので、それ見てにやにやしてます。
あとプレイ中ね!
雪冷「とか言ってさ、最近俺でしか遊んでないんじゃない?そのせいで詰め所でこのおっさんとガングロのチビに睨まれてさあ。」


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龍獄「ほう……よほど剣山(マルスナの的)になりたいらしいな。どうする白壱?」
白壱「グライディングヒューリーで真っ二つの方がいいんじゃねえの?目障りだ。」
まあまあ二人とも、相手は子供なんだし。
龍獄「俺よりでかい奴のどこが子供だ。」
だって、挨拶の仕方がこれ↑だよ?無駄にテンション高くて落ち着きないし、うまくいかなかったことがあったら物にあたるし。
雪冷「(;w;)」
白壱「かわいそうになってきた……。」
龍獄「騙されるな白壱。こいつのために、栄人(カロック)は消されたんだぞ!」
だってかっこよくないのに。そのうちお金に余裕ができたら転生してもらうから……。

そんなこんなで、ゴリラだのガキだの言われながら日々育てられているハルクの雪冷くんです。
信じられるか、この装備最高級ウォーエッジバトルセットなんだぜ……。
ハルクの服だけ気合入れすぎだろ!!!


クリックしてくれたら雪冷が肌色晒しに行きます。


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2章 リシタ 1節 男はクズばかり

  ドアを蹴破る音で目が覚めると、昨日やたらと私を魔族呼ばわりした男が剣を持って立っていた。その首には、フィオナの剣が付きつけられている。
「寝ぼけているの?リシタ。昨日反省してたわよね?」
「ああ、調べに行った。でも何一つそいつが無実だって証拠は出てこなかった!」
そういえば、私、昨日男を何十人も焼き殺したんだった。

 2章 リシタ
 1節 男はクズばかり

 あの男はリシタというらしい。超無礼な方法で部屋に入ってきて私を殺そうとしていたリシタは、30秒後にはフィオナに半殺しにされて部屋を追い出された。フィオナは私とリシタに、昨日のことを口止めした。私が爆発を起こしたことは誰にも言ってはいけない、私は爆発の時に怪我をして記憶を失ったことにしろって。
「本当に私、悪いことしてないの?」
「正当防衛よ。」
「でも、爆発でこの村も壊れたって……。」
「いいの、言わなきゃばれないわ。」
「どうしてフィオナはそんなに私を守ってくれるの?」
「私もろくでもない男にひどい目に遭わされたから。さ、細かいことは気にしないで、朝ご飯よ。」
フィオナについて入った食堂は、汗臭い男で溢れていた。気持ち悪い。
 一番近いテーブルに、綺麗で格好いい女の人と、リシタが座っている。
「そりゃフィオナに殺されかけたって仕方ねえな。そんなだからお前の片思いは成就しねえんだよ。」
「それとこれとは関係ねえだろ!フィオナは間違ってる。誰があんな爆発起こしたと……。」
「話すな、って言ったわよね?」
早速私の事を喋っていたリシタの首にフィオナの剣が……私の目がおかしくなければ刺さっている。リシタも飛び上がった。
「了承はしてねえよ、この暴力女!」
「舌を切った方がいいかしら。」
思わず後ずさりすると、格好いい女の人と目が合う。その途端その人は大声で笑い始めた。
「うっわ、リシタお前可哀想!こんな可愛い子敵に回したら、フィオナが敵になるに決まってんだろ!」
「悪かったな俺が可愛くなくて!」
私でさえ、いざリシタと目が合うまでは可哀想だなと思ういじめられっぷりだった。ちらっとこちらを見た目は敵意に満ちていて、そんな同情はすぐに消えてしまったけれど。
「あんたの人間嫌いは、俺を止める理由にはならない。俺はこれからも魔族が憎い。……ましてこんな、男に取り入るような能力持った奴はな。」
「男は魔族でも人間でもクズしかいないのね。」
笑い転げる女の人と、豆鉄砲食らった鳩のような顔のリシタを見て、私は思っていることをそのまま口に出してしまったことに気付いた。
 鷹のような黄色い目と睨みあう。
「別にあんたに取り入る気なんてない。取り入られてるように思うなんて可哀想な奴ね、余程もてないんでしょうね。」
こうなればヤケだった。自分の名前も、どこから来たかもわからない状態で、私は今本当にイライラしている。イケメンに言われるならまだしも、こんな背の低い、微妙な顔の奴に私が取り入る?侮辱もいいところだ。
「この身の程知らずが。」
リシタは口をぱくぱくさせている。ついにフィオナまで笑い出すと、リシタは私を睨みつけ、荒々しく食堂を出て行った。
 ドアがばたんと閉まり、食堂中の人がこちらを見た。こちらというより、机をバシバシ叩きながら笑っている女性を。
「お嬢ちゃんいいねえ!ははははっ、一生語り草にしてやろっと、リシタのやつ!」
自意識過剰だって可愛い女の子に言われて言い返せなかったとか傑作!と咽ながら叫んでいる。
「ベラとお嬢ちゃんにいじられて、可哀想と言えば可哀想だけど面白いわ。」
フィオナが席につくと、食堂の扉がゆっくり開いた。ドアをくぐって現れた大きな体に、思わずフィオナの陰に隠れてしまった。入ってきた大男は私がびくついているのに気付いたのか、膝を曲げて背を低くした。申し訳ないけれど、背が低ければいいという問題ではない。ムキムキのおじさんが膝立ちでごそごそ寄ってくる方が余程怖い。
「お嬢さん、具合は悪くないみたいで何よりだ。私は君の敵ではないから、そう怖がらないでほしい。そして、リシタの無礼も許してやってくれ。あの子は魔族の事となると周りが見えなくなる。」
とりあえず遠ざかって欲しくて、私は頷いた。あのチビを許してやる気は毛頭ないけれど。
「そして姉妹たちよ……あまりリシタを苛めないでやってくれ。ベラ、お前はお姉さんだろう?」
「いじめてないぜカロック。可愛がってるだけだからな、なあフィオナ、お嬢ちゃん?」
「そうよ、可愛いと苛めたくなるじゃない?」
カロックという大男は溜息をついた。
「フィオナ、ベラ、君たちは本当に初対面なのか?えらく気が合っているようだが……。リシタが苦労しそうだな。」
「私を魔族呼ばわりするからよ。」
私も加勢してみると、カロックは微笑んだ。私の向かいに座ってきたけれど、やはり大きすぎる体に思わずのけぞる。カロックの眉が垂れ下がった。
「じきに慣れるだろう……。お嬢さん、リシタは、育ての親の私が言うとどうしようもないが、馬鹿だ。悪い子ではないがな。一度思い込めば、それを貫き通してしまう。あの子には、人間を襲うのは魔族だという関係がしっかりできてしまっていてな。」
「じゃあどうして私が魔族になるの?あそこにいたのは魔族だった。人の家を襲って娘を攫ってはあそこに閉じ込めた。」
「御嬢さんも、人を襲うのは魔族だと信じ込んでいるようだな。人間も人間を襲う。君を閉じ込めていたのは人間だった。焼け跡から出てきた骨も人間の物だったよ。」
信じられない。人間は……人間と話した記憶があるかと言えばないけれど、もっと優しいはずだ。野蛮じゃない。そんな気が……そんな記憶がどこかに残っている。
「リシタは幼いころ、村を魔族に焼き払われた。その時の記憶と、火事になった娼館が重なったんだろうな。生き残っていた君に怒りをぶつけなければ、正気を保てなかったんだろう。後できつく言っておくから、もう忘れてやってくれ。」
「でも、私を魔族だって言うのは許さない。」
顔も思い出せない近所のおばさんが言っていた。住んでいた街を魔族に焼き払われた。家族も殺されたと。そんな人が何人もいた。百歩譲って人間が人間を襲うことがあったとしても、魔族が人を殺すことに変わりはない。私は無意味な人殺しなんてしない。魔族じゃない。
「ああ、言っておこう。」
カロックはゆっくり頷くと、運ばれてきたスープに目を細めた。
 
 朝ご飯の間、私はいろいろ聞いた。ここがコレンという傭兵だらけの村だということ。フィオナはしきりに男なんて信用するなと言っていた。特に、事務所のゲレンという男は第一印象から最悪だったらしい。
「ああ、傭兵団で思い出したよ。アイダン隊長が君の名前を知りたがっていた。」
「どうして?」
たぶん久々に食べるご飯はおいしくて、私のパンはもう5個目だ。
「そりゃ、働かざる者食うべからず、ってやつだろ。傭兵団に登録するには名前がいるからな。でも、忘れたんだっけ?自分の名前。」
ベラは自分の分のパンも分けてくれた。よく食べるな、と言いながら頭を撫でてくれる。
「うん……。」
「あれだ、マリーでいいんじゃね?リシタがそうやって呼んだんだろ?」
そう言って、ベラはフィオナを見た。
「そうよ。だから知り合いかとも思ったんだけど……見間違いだったみたいね。」
「私等もマリーが誰かは知らねえけど、リシタが会いたい人だったんだろ、たぶん。それで、余計にお嬢ちゃんに辛く当たるんだろうさ。そろそろ……あいつは自分の頭でしっかり考えられるようにならねえとな。昔のことは昔のこと、19になって感情で突っ走るのは……。」
リシタは4歳の時に魔族に家族を殺され、村を壊され、さまよっていたところをカロックに拾われた。ベラは12歳ぐらいの時記憶を失ってさまよっていたのを拾われた。3人は家族のようなものらしい。ベラはリシタを苛めるけれど、それも愛情表現の一つだろうとカロックは言っていた。
「いい機会だろ、我が弟を鍛える。他にパッといい名前も思いつかねえしなあ。」
ベラは私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「でも、それじゃお嬢ちゃんがリシタにもっと辛く当たられない?」
私は首を振った。
「え、大丈夫なの?」
「なんか……」
カロックやベラになんだかんだ大切にされているリシタを見ると、思う。この人たちの輪に入りたい。
「嫌なこと言われても、さっきみたいに言い返してやればいいから。」
何か別の名前を付けてもらって、当たらず障らずで過ごすのも有りだろう。でも、それではきっと、誰とも仲良くなれない気がした。自分のことが何もわからなくて、話し相手もいないなんて、そんなのは寂しくて嫌だ。
「マリー、お前漢前だな。気に入ったよ。」
「リシタがさらに可哀想な状態にならないといいが……。」
こうして、私の名前はマリー、家はコレンの宿屋になったのだった。


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あゆさんイベントに参加します

小説はもう少しお待ちください。
リシタがぐれまくってて話の収拾がつかない!そしてどんどん毒舌になる主人公の女の子!
ベラさんは通常運転、フィオナも通常運転ドS、謎のおっさんはしばらく逃亡中、カロックは子守で大変!
な感じです。

話は変わって、あゆさんイベント!


ステンドグラス完成

sutend.jpg



参加してきました。

みなさんあゆさん描いてる中、私だけ自分のカイと彼氏のイヴィなんですが……。
気にしない!

最初は窓の外でサンタさんの格好してるイヴィを、カイさんが中から抱き上げてキスしてる絵にしようかと思ったんですが、それだと可愛いイヴィちゃんはいろんな人がかいてるだろうなーと思い、不法侵入カイさんに。
カイさんの格好描くために自分で同じポーズしてみたら、腰が攣りました。
もうちょっと色気がほしかったです……。


そしてハルク!
作ったんですよ、公式ホームページ見ながら、うわーゴリラだ、とか思ってたら。
イケメンじゃないですか!なぜ真正面から撮ったんだネクソンさん!真正面と下からだとゴリラなのに!
ハルクさんは次の日記あたりでお披露目しましょう……。
おそらく白壱くん(リシタ)や龍獄さん(カイ)とひと悶着あるでしょうね……。



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1章までのキャラクター紹介

記憶のない少女

 推定年齢15歳
 身長150cm 体重47kg

 右臀部に魔族の印がある少女。おそらくサキュバスである。
 だが、自分は魔族ではないと主張し、魔族を激しく憎んでいる。
 娼館と思しき建物を爆破し、脱走した所をフィオナ達に保護された。

イヴィ


リシタ Lethita

 19歳
 身長156cm 体重60kg

 馬鹿力で強いが、身長がコンプレックスな少年。もう伸びない。
 4歳のころ村を魔族に襲撃され、彷徨っていたところカロックに保護された。
 フィオナに一目惚れしているのは本人にもばれている。

リシタ


カロック Kalok

 45歳
 身長237cm 体重140kg

 ジャイアントのおじさん。優しいが力加減は下手。
 人間でも魔族でもない、よくわからない種族で、昔村ごと滅ぼされたという。
 一人旅している途中、リシタとベラを拾った。

カロック


フィオナ Fiona

 22歳
 身長163cm 体重56kg

 非常に鋭い視点と、騎士に勝るとも劣らぬ剣の腕前を持った美女。
 10年前のロチェスト内乱で死んだことになっていた。家族はその時失っている。
 ベラとすぐ仲良くなったが、リシタは正直どうでもいい。

フィオナ


ベラ Vella

 23歳
 身長172cm 体重49kg

 胸とか動きとかヒップとか胸とか、色々人間離れした女性。
 名前以外の記憶を失っているが、男勝りで明るい性格の持ち主。
 趣味はフィオナを眺めてにやにやすることと、リシタをいじること。

ベラ

地下水路に現れた赤目の男

 地下水路で話していた二人を襲撃した男。
 少し皺のある赤い眼の男だった、という話以外は被害者から聞き出されていない。

インケルス

 オルテル城城主。きっと昔はM字禿げではなかった。
 サキュバスとなって甦った恋人・シルヴィアとキスできないのが悩み。
 キスすると吸精で殺されかねない。

シルヴィア

 オルテル城のサキュバス。
 かつて、現法王レウラスの娘だった。政略結婚を逃れるため自殺。
 自分を狙ってきた男達は迷いなく殺す恐るべき美女。

シルベリン

 18歳。15年前の魔族の襲撃で家族を失い、以来領主のインケルスに育てられている。
 育ての親がちゃらんぽらんなのに対し、恐ろしいほど堅物である。
 誰かへの復讐の為だけに生きている。

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1章 マリー 4節 オルテル城のサキュバス

 暗い地下水路の中、男の声だけが響く。
「まずいことになった。例のサキュバスが逃げたらしい。」
「そうだろうさ、学のないものに預ければ、結果は見えているだろう。」
「今回は私の失敗だ。精気があれほどの力を与えるとは……。」
「責任もって、今回は殺してもらうぞ。何人の魔術師が犠牲になってもな。」
キッキ、とあたりが騒がしくなる。
「どうした、ネズミどもがうるさい。」
瞬く間にネズミの鳴き声は止み、つんと鉄の臭いがした。カツカツと、落ち着いた足音が近づいてくる。
「殺せないことはわかっているから安心しろ。」
「誰だ!」
 カンテラを向けた先に、弓を構える男がいた。次の瞬間、二人の膝に激痛が走る。
「殺すのは面白くない。貴様らが死なないことは知っているしな。だが俺は、お前達が弓使いに痛めつけられなかったということも知らない。」
男が軽く飛び、長い脚を振り抜く。二人は壁に叩きつけられた。
「誰だ、私にこんなことをしてただで済むとでも……。」
「お前がこのことを人に話せたら、の話だろう。どうせ、泣き叫んで命乞いしかできないようになる。」
弓を背負い、彼は2人の前にしゃがみこんだ。
「あいつと同じ目に遭わせてやろう……。二度と、手を出すな。」
少し皺のある赤い目が、妖艶に弧を描いた。

1章 マリー
4節 オルテル城のサキュバス

 オルテル城にはサキュバスがいる。絶世の美女だが、会いに行った者は帰ってこなかった……。
「男って馬鹿ね、インケルス?死ぬと解ってて来るんだから。」
「たまには生きたまま返してやってはどうだ?」
黒目がちな大きな目、長い黒髪に白い肌、抜群のプロポーション。この上ない美女を膝に乗せたまま溜息をつくのは、オルテル城主インケルス。美女はシルヴィアといった。
「駄目よ、この不細工、懸賞金目当てで来てるもの。レディーに対する礼儀がなってないわ。」
シルヴィアが覗き込む水晶玉の中には、大きな黒い犬に追い詰められた男がいた。犬の鋭い歯が男の首を裂き、男はずるずると崩れ落ちた。
「それでもまだ美男子なら、吸精してあげてもよかったんだけど。」
そう言って、彼女はインケルスの頬を撫でる。
「貴女にキスできないのが残念だわ、インケルス。」
「してくれても構わないが。」
「執務中です、インケルス様。」
 無表情で立つ青年はシルベリンという。
「まったく、お前は堅いな。」
「今のこの不安定な情勢で、色事に現を抜かすのはおやめください。」
インケルスが眉をひそめる。
「いつものことだろう、この程度。」
「シルヴィア様は、気付いてらっしゃるでしょう。」
そう言い捨て、彼にしては珍しく……叩きつけるように扉を閉めて出て行った。
 インケルスが目を向けると、シルヴィアがふいと目を逸らした。
「あいつは反抗期か?18と言えば、わしも大暴れしていた気がするが。」
「違うわ……」
シルヴィアの暗い声に、インケルスも心配したように眉尻を下げた。
「何かあったのか。」
「サキュバスが生まれたの、コレンの近くで。昨日の晩、大爆発を起こして。」

 サキュバスは男を惑わせ、精気を吸う魔族だと言われている。他の魔族ほど敵視されていないのは、偏にその美貌のせいだとも言われている。だが、それは真実を知らない者達の話だ。
 サキュバスは、恋煩いの生む魔族。道半ばで命を絶たざるを得なかった者本人、あるいは残された恋人の思いが募ってサキュバスを生み出す。彼女達は結ばれることのなかった恋人を探し出し、思いを遂げるために、美貌と、永遠の命を持って生まれてくるのだ。確かに精気を吸えば吸うほど強力にはなるが、それは生前恋路を絶った他者を排除するための力に過ぎない。彼女達が眠りにつくのは、恋人と結ばれ、現世に思い残すことがなくなった時だけだ。あるいは、彼女達を形作る魔力をかき消すような傷を受けた時だけ。
 そしてもう一つ、サキュバスの出現は世を乱すとも言われている。
「あの子は思い出しているのよ。私が自殺した後、私がサキュバスになった後、何が起きたか。」

 シルヴィアは当時ロチェストの司教だったレウラスという男の一人娘だった。本当の父親ではない。母は娼婦で、シルヴィアはレウラスに拾われたのだ。美しく成長し……そう、シルヴィアはサキュバスになる前から美しかった。それ故王国騎士のインケルスと恋に落ちた。だが、インケルスはシルヴィアを嫁にもらうには、腕が立ちすぎていた。
 一つの領土と城を与えられていたインケルスがレウラスの娘と結ばれれば、王家にさえ口出しできる。それほどインケルスは人望があり、強かった。そして、レウラスは結婚を許さず、シルヴィアを王家に嫁にやったのである。
 シルヴィアは結婚式の前の晩、自殺した。そしてサキュバスとなって、インケルスの元へ戻った。

 インケルスが苦しげに口を開く。
「あれは偶然だと何度も言っただろう。確かにお前が自殺したことで私は王家から敵視されるようにはなった。だが魔族の襲撃とそれは別だ。」
「貴方は人が良すぎるのよ。レウラスは聖職者なんかじゃない。あの男は、私をいかに利用するかしか考えていなかった!」
インケルスはそっとシルヴィアの背を撫でた。
「シルベリンはあの襲撃で、村の人も家族も亡くしたのよ。アイダンだって、家族を亡くした。あれさえ起こらなければ、アイダンが法王庁に目をつけられることもなかったのに……。」
シルヴィアは頭をインケルスに預け、服をぎゅっと掴んでいる。サキュバスが世を乱すのは事実だった。何かどうしようもない力のせいで死に別れた恋人たちが、その力を壊すべく、生まれてくるのだから。
「考えすぎだ、シルヴィア。たとえあの魔族の襲撃を、法王庁がけしかけていたとしても……お前はシルベリンも、アイダンも、大事にしていただろう?あの二人が恨むべきはお前じゃない。魔族と黒幕だけだ。」
インケルスは、水晶玉の中の骸を睨みつけながら言った。
「どれほど侵入者が来ようと、この城の中は安全だ、シルヴィア。その新しいサキュバスも、我々には関係ないだろう……。もう二度と、お前を一人にはしないから、安心しろ。」

 自室の扉を乱暴に閉め、ベッドに倒れこんで、息を整える。忘れられない、あの日。目の前で刺された両親、食い千切られた姉の顔。
「失礼なことをしたかな……。」
傷ついた表情のシルヴィアを思い出して、シルベリンの胸は痛んだ。あの襲撃の直前、シルヴィアがサキュバスになったと聞きはしたが、彼自身、シルヴィアのせいではないと思っていた。だが、どうしても、誰かに気持ちをぶつけなければ耐えられない。本当に恨むべき相手は、近くにはいない。
 ベッドサイドの写真たてを取る。襲撃の後、家から見つけ出してきたものだ。一部分ちぎり取られた写真の上は、何重にもひびが入っている。シルベリンはそこに親指をかけ、ぐっと握りつぶした。
「マリー、父さん、母さん……あいつだけは許さない。絶対に見つけ出して、同じくらいの苦痛を与えて殺してやるから……。」
また数本、硝子にひびが入った。


1章 マリー 了


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1章 マリー 3節 似ている少女

 爆発が起きた場所はすぐ見つかった。コレンからロチェストへの道の真ん中あたりで、小屋が燃え上がっていた。
「助けてくれ!俺たちが悪かった!」
「逃がしてくれよ!」
思わず口元に手を持っていこうとするリシタの背に、フィオナの蹴りが入る。
「行くわよ。何怖気づいてるの。」
「っせえ、平気だ!」
くしゃりと顔を歪めながら剣を引き抜いたリシタに、フィオナは少し申し訳なさそうな顔をした。昔からそうだ、彼女は優しく慰めるのが上手くない。ついつい発破かけるようなことをしてしまうのだ。と、走り出しかけたリシタが突然立ち止まった。
「……マリー……?」

1章 マリー
3節 似ている少女

 燃え上がる小屋の前、少女が首をかしげている。
「どうして生かさなきゃいけないの?貴方達が生きていたら、もっと多くの女の子が辛い目に遭う。」
リシタの見つめる先の少女は、何も纏っていないように見えた。呆然とするリシタと少女を見比べ、フィオナはとりあえず少女に問いかけた。
「お嬢ちゃん?何か知っているの?」
「あいつらは化け物。助けなくていい。」
少女の格好と、凄まじい殺気から、何があったのかおおよそ理解したフィオナは、それでもまだ納得できず尋ねた。
「あなたが爆発を起こしたの?誘拐犯達を拘束して?」
「うん。」
「あなた一人で?」
「うん。私、何も悪いことしてないわ。他の女の子は逃がしてあげた。」
殺したいのはあいつらだけだから、と言った少女は、次の瞬間消えていた。一瞬の後、彼女がいた場所に二本の剣が振り抜かれる。
「リシタ!」
「フィオナ、何ぼさっとしてんだ!そいつのケツを見てみろ!」
「男なんて嫌いよ。」
リシタの背後に現れた少女が手をかざす。が、何も起きない。首を傾げた少女に再びリシタが切りかかるが、フィオナの盾に阻まれた。
「何しやがる!そいつの印が、魔族の証が見えねえってのか!」
「見えたわよ、でも恥を知りなさい、リシタ!」
フィオナが盾でリシタを弾き飛ばす。
「丸腰の女の子に何する気なの?」
「魔族に女もくそもあるか!」
「自分で考える頭のない馬鹿より魔族の方が、まだ話が通じるわ!」
立ち上がったリシタの頭に、再びフィオナの蹴りが入る。
「この子が何をされたか考えなさい。魔族だから人間に何をされても構わないの?」
「嘘かもしれねえだろ!」
「この子が嘘をつく必要があるの?」
遂にリシタの胸を踏みつけて起き上がれないようにしてしまったフィオナは、出来る限り柔らかな表情で少女に向き直った。
 少女が信じられない言葉を口にする。
「お姉さん、あいつらは魔族よ。」
「え?」
「人の家を襲ったの。それで女の子を攫って、ひどいことをした。」
背後から聞こえる叫び声は、人間のものだ。
「魔族が人間の言葉を喋るものか!フィオナ、放せ!」
「静かにしなさい!」
「魔族の言うことなんて信用できるか!放せよ!」
少女を見れば、リシタを睨みつけている。
「私をあんな奴らと一緒にしないで。」
「何時まで白を切るつもりだこの雌豚が!」
「黙っとけっつってんのが聞こえねえのか!」
フィオナの右足に更に体重がかかり、リシタが呻く。
「リシタ、貴方は、魔族は意味なく人間を傷つけ、人間はいつも被害者だと言いたいの?それなら、今は貴方が魔族でこの子が人間ということで構わないでしょうね?私に殺されたって文句は言わない?」
「そいつが今何人焼き殺してるか解ってんのか、フィオナ?あんたは魔族に襲われたことがないから、そんなことが言えるんだろうさ。」
フィオナが剣を抜く。
「じゃあ貴方は」
リシタの首すれすれに、剣が突き刺さった。
「人間に襲われたことはあるの?貴方の家族は、村の人々は、偶々魔族に殺されたかもしれない。でも私の家族は人間に殺された。」
リシタが目を見開く。
「それでも貴方は、この子が悪いと言うかしら?確かに褒められたことはしていないでしょうよ。でも、もし貴方が、この子と同じ目に遭っていたら、何をするでしょうね。」
「お姉さん、私は魔族なんかじゃない。」
未だリシタを睨む少女の頭をそっと撫でた。
「ええ、貴女は悪い子ではないわ。でも、貴女も少し間違ってる。」
「どうして?だってあいつらは!」
叫んだ少女が、ふらりと座り込んだ。フィオナが駆け寄ると、潤んだ目でフィオナを見つめてくる。
「怖かったのね。」
「うん……。」
遠くでは、男達の断末魔の叫びが響いている。
「あれ……?」
「どうしたの?」
「私……あいつらに何されたか、憶えてない……」

 眠ってしまった少女は宿屋に預け、未だぼんやりしているリシタは投げつけるようにして怪我人の群れに放り込んで仕事に集中させ、フィオナはこの件を迅速に片づけた。少女の右の臀部に魔族の証があったことは隠して。
「どうやったかはわかりません。ですが、あの少女は監禁され、その他にも被害者はいたようで……。」
「本当はどうやったか知っているんだろう?」
低く聞いてきたアイダンに、そこは正直に首を振った。
「隊長は何か心当たりでも?」
「そういうお前は、私に何か隠している気がするが……まあ、お前は悪人には見えない。事件の裏が、表沙汰にするようなことではないからな。だが何か問題が起きれば……」
「ご理解いただけて何よりです。」
一礼し、事務所を出た。と、想像通りの人物が扉の横に立っていた。
 リシタはむくれたような、それでいて情けなさそうな表情で、ふてぶてしくフィオナを睨んだ。
「どうしたの?蹴られ足りないかしら。」
「いや、その……でも俺は、魔族が憎い。それは変わらない。」
「それはそれで当然よ。私だって、いつか親の仇を討つと心に決めて傭兵になったんだから。」
フィオナがじっとリシタの目を見つめる。
「少しは考えてくれた?貴方と私に差はない。意味なく誰かを殺す奴らを憎んでいるだけ。あの子とも差はない。あの子は自分を監禁した奴らに復讐しただけ。」
「本当にそうか?あいつは嘘をついてないと何故言い切れる?」
「私は魔族より人間の方が嫌いだから、そう思うのよ。」
フィオナは居心地悪そうに笑った。
「あの子が嘘をついていると思うなら、あの小屋をもう少し調べてきたら?何か証拠が出てきたらあなたは納得するでしょう?私が考えを変えて、あの子がサキュバスだってアイダン隊長に言うかもしれないし。」
「ほんと、どこまでも図太い奴だよな、お前。」
リシタが溜息をつき、剣を抜いた。月明りに翳して、傷がないか見ている。
「あなたは小心者すぎるわ。自分が悪いと思ってないなら、私を待っとく必要なかったんじゃない?」
「女怒らせたら怖いってベラに言われたからな。」
剣を収めると、リシタはローブの前を引き合わせた。
「悪かったよ、辛いこと思い出させて。」
「私もちょっとやりすぎたわ。怪我してない?」
リシタが目を泳がせる。あちこち見まわした後に、ばっとうつむいた。
「あ、あの程度で怪我するほど……」
くるりと踵を返すと、捨て台詞のように叫びながら走っていく。
「心配なんかするなよ!お前に腹立たなくなっちまっただろ!」

 少女はサキュバスだった。人でも魔族でもないが故に魔族を見分けられるカロックがそう言ったのだから間違いない。だが、混乱している少女に、そして魔族を憎む彼女にそれを告げるのは酷だった。結局、問題になるまではこの話を葬ってしまおうということになった。
「私、ひどいことされたのは覚えてるの。でもそれが何だったか、思い出せない。」
ただでさえ、少女自身がこの状態である。あれだけ男達を憎み、殺気を発していたというのに、時間が経って落ち着くと、自分が無意味な殺人をしたのではないかと言い始めた。
「まあ、ちょっとやりすぎかもね。」
カロックのシャツをワンピース代わりにしている少女の髪を梳いてやりながら言うと、膝を抱えてしまった。
「でも、本当にあれお嬢ちゃんがやったの?並みの魔力じゃできないわよ?」
フィオナは少し期待しているところがあった。いくら監禁されていたとはいえ、皆殺し、それもかなり苦痛を伴う方法で少女が何十人もの男を殺したとは考えたくなかった。
「どうやったかもわからないけど。でも、私がああなって欲しいと思ったら、なったの。」
「そう……」
「私、悪いことしたんでしょ?また牢屋に入れられるの?」
フィオナは微笑んで首を振った。
「きっとそんなことは無いわ。あなたの他にも女の子はいたんでしょう?」
「うん。」
「その子達の家族は、子供が帰ってくるのを待っていたはず。その人たちにとって、お嬢ちゃんは英雄よ。」
「でも私は殺しすぎた。あいつらは魔族で、いろんな人を殺した。でも、私はあいつらと同じことをしたの。」
少女が膝に顔をうずめる。フィオナが撫でてやれば、こてんともたれかかってきた。
「それがわかっているだけで、貴女が牢屋に入れられることは無いと思うわ。世の中の英雄と言われる人達の殆どは、ろくに考えもせず、自分に指一本触れてない相手を、触れさせないまま殺すだけで英雄と言われてる。中には本当にいいことをした人もいるんだろうけど、私が知ってる英雄は、そんな奴らばっかだったわ。ただ相手が『敵』だから、深く考えもせず殺したのよ。そんな奴らがこの国を、世界を動かしているけれど……。」
形の良い小さい頭は、フィオナの手にぴったりと合っている。
「もし奴らがお嬢ちゃんを牢に入れると言うなら、私が絶対に許さない。」
少女が目を上げる。
「お姉さんの仲間は?あの男は?」
「お嬢ちゃんに危害を加えるなら……さっき蹴りまっくた時の3倍くらいはやってあげる。」
「あははっ、お姉さん強いんだね。」
濡れた目が弧を描くのを見て、フィオナは軽く眩暈を覚えた。カロックの言葉が甦る。
『フィオナ、あの子が敵だとすれば、危ないのは……男であれ、女であれ、サキュバスは狙った相手を確実に口説き落とす能力があるということだ。お前は大分あの子に肩入れしているようだからな。』
ふるふると首を振り、暗い考えを吹き飛ばす。傷つけられた少女に味方などいない。自分まで疑ってかかれば、この子は一人になってしまう。
「そうそう、私はフィオナよ。名前で呼んでくれて構わないわ。」
「フィオナ……ありがとう、私は……私は……。」
少女が大きく目を見開いた。
「私、誰だかわからない。私は誰?どこから来たの?」




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1章 マリー 2節 問題児達

 割れたガラスが散乱し、傷ついた村人で溢れかえる店の前。無傷なのは結界の張られた魔法商店だけだった。
「ネベレス、貴方どこに行くつもりですか!あんなに大勢の前に姿を現したら……」
扉を押さえている青年に、フードの男は薄く笑った。
「あの爆発、魔法によるものだと知っていてもまだそんなことを言うのか。」
「だからです!騎士団が駆けつけるでしょう。あなたこそ、自分の首にいくら掛けられてるか知っているんですか!」
「駄目じゃないブリン!ヒヒッ!」
聞きたくもない声がしたかと思えば、扉がブリンごと吹き飛んだ。
「怪我した人、見てあげなくちゃ!」
「師匠っ!ああもう……とにかくあなたは引っ込んでてください!」
ブリンの細腕がフードを引っ掴むと、奥への扉に向けて男を放り投げた。

1章 マリー
2節 問題児たち

 気が付けば育ての親の腕の中、最近可愛くなくなってきた義弟と共に床に押し付けられていた。ランプは消え、窓ガラスが飛び散っている。ベラの鋭敏な鼻は、血の臭いも嗅ぎ取った。
「カロック、怪我したんじゃ……!」
「少しだ。気にするほどじゃない。ベラ、リシタ、怪我はないか?」
「俺は大丈夫だけど、カロック……」
「大丈夫だ。」
体を起こすと、月明りでお互いの顔が見える。眉の垂れ下がった二人に、カロックは体同様大きな声で笑う。
「二人とも心配性だな。」
「だって俺たち、カロックがいないと生きてけねえもん。」
リシタが情けない声を出した。いつもならいびりにいびるベラも、泣きそうな顔になっている。尋常でない様子に、カロックは自分の体を見てみた。確かに流血しているが、そんなに深い傷ではなさそうだ。
「お前たち、傭兵団に入るというのに、そんな怖がりでどうする。みんなを守るんだろう?ほら立て。」
優しい表情で……しかしカロックは二人の頭を片手ずつで鷲掴みして引っ張った。二人は痛がる様子もなく操り人形のように立たされている。これがジャイアント流なのだろうか。
 割れた窓から見下ろした広場は、地獄絵図と化していた。殆どの建物が壊れ、怪我をした傭兵で溢れている。皆、ロチェスト側にある魔法商店に押し寄せている。そこしか壊れていない建物がないようだ。頑丈な傭兵団事務所でさえ窓が割れている。
「傭兵団事務所のドアが飛んでいるな。中に誰もいないといいが。」
「カロック、村が……どうしよう、俺はまた何も……」
「……っ」
ふと二人に目を戻せば、ひどく震えていた。
「本当にどうしたんだ、」
屈んで視線を合わせれば二人の目に窓の外が映った。パニックに陥る人々、どちらへ逃げていいかわからずに広場で押し合っている。まだ幼い少年兵、少女兵が泣き叫ぶ姿……
 それはまるで、魔族に襲われた村だった。

 探している部屋は、上の階。我先にと降りてくる宿泊客を押しのけて上へと上がれば、すっかり空になった廊下へ出た。息を整える間もなく走って、目当てのドアへ。
「もうお前たちは大きくて強い。私より素早く動けるし、力も申し分ないだろう。」
聞こえてきた声はカロックのものだ。どことなく不穏な言葉にドアを開けようとしたが開かず、思いきりドアをノックする。
「ベラ!大丈夫なの!?」
「フィオナ……?」
「カロックが今にも死にそうな時の台詞みたいなこと言ってるけど!誰か呼んでこようか!?」
「え、カロック死にそうなのか……?何で早く言わないんだ!」
「リシタ、どうしようドアが開かねえ!」
話は読めないが、とりあえず中の3人が危ないことはわかる。
「ベラ、下がってて!」
「おいフィオナ待て私は死にかけてなんか」
フィオナは一歩下がり、助走を付けて扉を思いきり蹴った。轟音を立ててドアが倒れる。
「カロック待ってて、すぐに人を……あれ?」
中では座り込んだリシタの背をゆっくり撫でるカロックが、心底呆れた目でベラとフィオナを見ていた。
 死にかけていたはずのカロックは、腕を切ってこそいたが、震え続ける二人に比べればどうということは無かった。
「だから待てと言ったんだ。」
「だって、あとはお前たちに託すみたいなこと言ってたから。」
フィオナが来た今では、リシタよりは平静を保っていたベラでさえも座り込んで膝を抱えてしまっている。
「リシタとベラがあんまり怯えるからな。お前たちはもう昔とは違うと言い聞かせていただけだ。」
昔とは違う、という言葉を考えるフィオナに、カロックは鋭い視線を送った。フィオナが黙って頷く。大きく息を吸い、明るい声を出した。
「リシタ。何この程度で震えてるのよ。貴方背と一緒で肝も小さいの?」
リシタがぐっと顔を上げた。吊り上った目でフィオナを睨むが、その顔に浮かんだ穏やかな微笑みに、開きかけた口を閉じた。一度ゆっくり目を閉じ、ゆっくり目を開く。
「平気だよ。俺はカロックが心配だっただけだ。」
「そう、ならいいんだけど。」
フィオナの手が、乱れてしまったベラの髪を梳くように撫でる。ベラも大きく深呼吸し、自分を撫でるフィオナの手を掴んだ。強い目がフィオナを見る。
「悪いな、もう大丈夫だ。可愛い子に弱み見せてるようじゃ駄目だな。」
「あら、口説く余裕があるの?」
フィオナがにっこり笑うとベラがにやりと口角を上げた。
「当たり前だ。私はそこのヘタレ男とは違うぜ?」
「ベラはリシタより可愛い子に目が無いもんでな。その上押しが強い。気をつけろよ。」
カロックが声をあげて笑い、立ち上がる。ベラ、リシタ、フィオナも続いた。
「とりあえず、傭兵団が復旧しないことには村の修復も進まない。行こう、兄弟。」

 魔法商店へ人が流れるせいで、傭兵団前は人がおらず、ひっそりとしている。
「これは、片付けに時間がかかりそうね。」
中に入れば、椅子がカウンターに当たって砕け、飛ばされたドアがキャビネットを割っていた。
「とりあえず、ドア直そうぜ。あれがいちばんでかくて邪魔だ。」
硝子を踏まないように気を付けながらキャビネットに近付くリシタ。割れかけた木の板を持ち上げるのと、ベラが叫ぶのは同時だった。
「アイダン隊長!」
「え?」
戸口へ向き直ったリシタも、キャビネットを振り返って凍りつく。
「しっかりしろ兄弟!」
カロックがガラスの山の中から掬い上げた人物は、低く呻くと目を開けた。
「大丈夫か、おじさん!」
「リシタ……?」
「どっか切れたりしてないか?この村、医者ってどこにいるんだ?」
「ありがとう、少し気を失っていただけで怪我は……さっきのは何だ?」
アイダンは自分が抱えられていることに気付くと、カロックに下すよう促した。が、左足を痛めたようで顔をしかめている。
「急にドアが飛んできて、キャビネットに叩きつけられたところまでは覚えているんだがな……。」
「「「隊長!!」」」
「お前達、無事だったか。よかった。」
「私達もついさっき、フィオナが掘り出してくれたんです……。」
震えた声のケアラは木屑まみれで、フィオナは何食わぬ顔でそれを払ってやっていた。その落着きっぷりに驚きつつ、リシタはアイダンに向き直った。
「事務所の人は怪我がないみたいだけどさ、村の人が怪我してんだ。隊長、この村の医者ってどこにいるんだ?」
「医者はいない、が、魔術師のブリンとリエル様なら治癒魔法が使えるはずだ。マレック、二人が無事か見てきてもらえるか。ケアラ、外が騒がしいようだからお前は誘導に当たれ。ゲレン、お前は私とここを片付けて、村人の休める場所を作る。いいな。」
「「「はい!」」」
ケアラとマレックが飛び出していく。
 フィオナは呆然としているベラの背をトントンと叩いた。
「大丈夫、村のど真ん中で爆発が起きたわけじゃない。死人は出ないわ。」
「わ、悪い……大丈夫だ。」
訝しげにベラを見るアイダンに、フィオナは有無を言わさぬ視線で返す。
「アイダン隊長、爆発の原因は調べなくても構わないのですか?」
「調べなければならないが……」
アイダンは声を低くした。
「魔法の使えない私にでも、魔力の流れがわかった。これほどの力を出せるとなれば、只者ではないだろう。力も、地位もだ。不用意には動けない。」
「それは、傭兵団としてですか?」
フィオナの問いに、アイダンは目を丸くする。只者でないことは薄々気づいていたが、この死んだはずの女が生きていたのは、偶然ではないような気さえした。
「えらく察しがいいな。」
「大きな組織がまとまっているために影が必要なのはわかります。でも、私はそれは許さない。アイダン隊長、おそらく今身元不明の私達を、傭兵団に入れられず苦労してらっしゃるのでしょう。使わない手はないと思いますが。」
ギラリと光ったように見えた青い目に、思わず頷く。
「では、頼もうか……。」
「隊長、なら俺も行きます。もう二度と、魔族の好きにはさせない。」
ぐいと出てきた青年の目も光っていたが、こちらは純粋な光だった。
「助かる、リシタ。だがお前は今冷静さを欠いているようだ。フィオナの指示には従うように。……他の2人にも……」
「ベラは調子が悪いようです。カロックは村で瓦礫の処理に当たった方が、救助にはいいのでは。」
今度はカロックが驚いたようにフィオナを見る。ベラはふわりと微笑んだ。
「ありがとうフィオナ。」
「了解だ。頼んだぞ、兄弟。リシタ、くれぐれも無茶はするな。」
「おう!」
がしゃんとドアを嵌め直し、リシタは元気よく拳を出した。それを見て優しく目を細め、カロックも拳を合わせる。加減し損なったかリシタは少々痛そうな顔をしたが、剣を抜いてアイダンに敬礼すると、生き生きとして事務所を飛び出していった。


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